-言志四録から紐解く-
みなさん、佐藤一斎先生という方を聞いたことがありますでしょうか?江戸時代を生き、昌平黌の儒官となった方(今で言う東京大学総長の立場)です。以前小泉首相が教育関連法案を衆議院で議論している中で述べてから、より有名になったことで知られています。
佐藤一斎先生には6000人とも言われる門下生がいて、佐久間象山、横井小楠、中村正直、山田方谷、そこに続く勝海舟、吉田松陰、高杉晋作、木戸孝允、伊藤博文など、聞いたことがない人はいないような、そうそうたる偉人が連なります。
中でも、西郷隆盛が座右の銘として愛誦し、その中から101条を選び「南州手抄言志録」として残したことで有名です。
私は子供たちの指導者である前に、ひとりの大人として、人間として、この書から多くのことを学んでいます。若かりし頃とは違い、子を持ち、教えを与えていく立場になっていく大人ですが、それでもまだまだ今でも日々学ぶことはたくさんあります。
この本には、何度も「志」という言葉が出てきます。そして次の一節があります。
人は環境によって作られるが、その環境を良い方へと変えていくのは、志を持った人間である。志のある人は、自らを切り開き、良き師、良き友に恵まれ、そして学び、励まされ、一度しかない人生を有意義に創造していく。人生をよくするのも悪くするのも、この志次第である。
お気づきかもしれませんが、「士心塾」の士心とは、「志」を崩した言葉です。
私が「士心塾」に込めた、子供たちの人生の成長を願う想い、そして私が「言志四録」から学んだ数々の教えを、ここで共有していこうと思います。
今日のテーマは「学びとは何か?」。
言志録 第六条にこのような記載があります。
「学は立志より要なるは莫し。而して立志も亦之れを強うるに非らず。只だ本心の好む所に従うのみ。」
学問をするには、志を立て、これを達成するためには心を奮い立たせることが大事である。しかも、その志は人からいわれてやるのではなく、自分の本心から出たものでなければならない。
皆さん、お気づきでしょうか?
これこそが士心塾での柱になっている、学びという考え方の原点です。だからこそ、子供たちに、○○をやってきなさい、○○をしなさい、という指導方針ではなく、自らやる!と言わせるように気持ちを持って行かせる、方向付けしてあげる事に注力してるのです。
要は、保護者が子どもに、○○しなさい、と指導しても、本人が本心からそうしたいと思わない限り、成長のスピードは加速しないのです。一方で、劇的に伸びている子たち、士心塾でいうところの、波に乗っている子たち、というのは、自分自身の本心から、絶対にこうなってやる、という言葉を発します。
もちろん士心塾で、すぐに波に乗る子もいれば、時間がかかる子もいます。でも大切なことは、親がこのプロセスを止めないこと。子供たちの意識というものは、プラスの方向付けを試みる我々の空気に時間がかかったとしても、次第に馴染んできます。
それぞれの子供たちの志というものが明確に見えた時、そこに向かうプラスの方向付けにより信念が生まれ、成長のスピードは劇的に加速します。社会人で言うところの、人生の流れも変えるようなプラスの流れへとシフトしていくのです。